2016年 08月 04日
----------------------------------------------------------- --Appetizers: *Mahogany Clam *Horsemussel *Sea Urchins *Skerpikjøt *Leek *Garnatálg *Rhubarbs +Champagne Bulles de Comptoire #4 / Charles Dufour --Our roots: *Cod and Watercress TOSKUR OG VATNKARSI +15 Riesling "Cuvee Theo" / Weinbach *Crab and Caplin KRABBI OG LODNA +14 Sauvignon blanc "Sernauberg" / Weingut Sattlerhof *Halibut and Wild Herbs KALVI OG VILLAR URTIR *Langoustine and Spruce HUMMARI OG GRANN +10 "La Mailloche" / Andre & Mireille Tissot *Lamb's Head and Potatoes SEYÐARHØVD OG EPLIR +Raest kjot by Mikkeller *Fulmar and Beetroot HAVHESTUR OG REYÐRÓT +10 Torroja Teroir al Limit *Lemon Verbena and Thyme *Sorrel and Grass SÝRA OG GRÆS +14 Riesling Spatlese "Mandelgarten" / Muller-Catoir *Dulse and Blueberry SØL OG BLÁBER +14 Muscadelle / Robert & Bernard Plageoles *Góðarað [AQ!] さて、「旅の目的」(笑)である「KOKS」を訪れる時がやって来た。 初めてKoksのことを知ったのは何でだったろう? 多分、海外の雑誌かなんか見てた時のこと、へべが、 「フェロー諸島でモダンノルディックやってる若いシェフが、干し羊を作るのに島中に羊をぶら下げてデータ取ってるんだって…」 と目を留めた。…んだっけな。 最果ての孤島で何か変なことやってる若きモダン衆(シェフPoul Andrias Ziskaは(その時点で)まだ20代前半!という)…は、それからずっとウチの「いつかは行ってやる」一軒となっていた。 その間、Koksには更なる世評も集まるようになり、ついに「The Nordic Prize 2014」ではグランプリを獲得する(それまでに、noma, Maaemo, Geraniumなどが受賞)。今や「モダンノルディック新世代の雄」ということであるらしい。 まあそんな訳で、とうとうやって来た。 …やって来たけど、それ以上のことは実はあんましよく知らない(^^;)。 ま、そこはそれ。旅というのは「目的、必ずしもハイライトならず」という諺もある(?)ように、出会ったものだけが旅である(笑)。 予約時に(サイト見て)わかったことが一つある。 「Koks」はフェロー諸島ではベストホテルの一軒Hotel Føroyarの中のダイニングであったのだが、つい最近、独立・移転したらしい。 場所は同じStreymoy島の歴史的文化遺産地域であるKirkjubøur。(片仮名表記に挑んでいるサイトは少ない(笑)が、「キルクシュボア 」「キルケビュー」など) ***** 島の夕方となったが、この日はたまにワッと雨が降るのが、悩ましい。 KOKSのある歴史地区Kirkjubøurの村は、101番のバス終点のGAMLARÆTTから1.5kmほど行った所にある。 「大粒の雨」のことを考えなければ、ブラブラと歩いてちょうど良さそうなのだが。 でも、ドッカン降られると悲しいわよねえ。 ま、そんなことで、ちょっと早めにタクシーでKOKSまで行くことにする。 着いてみて降りが大したことなければ、周りの歴史地区散策をすればいいではないか。 TorshavnからKirkjubøurは近い、タクシーだと15分くらいか。「ハイキングでどうぞ」と書くガイドもあるくらい。 フェローはそこら中そうなのだが、Kirkjubøur近辺も凄絶に美しい。 岩の作る崖線が詩を編む。 羊も牛も勝手に草を食む。 タクシーは玄関まで乗りつけてくれた。 が、天気はさほど悪くない。記念撮影しながら相談、予約時間まで30分あるし、一周して来ようか。 KOKSは、村のちょっと小高く上がった所にある。 小体な、草を生やした屋根に「赤と黒」の色彩の伝統的な作り。そして、…えーと、よく見ると、建物は完成に近く見えるのだが、土台部や前庭部の目隠しや装飾や整備はまだまだこれから…っぽくて、スケルトンだったり石がゴロンと積んであったりするだけ。…だったりする(^^;)。ホントに最近の移転なのね。 ここから海岸線まで降りてった辺りに建つのが歴史的建造物のようだ。 ブラブラ、と。 馬にコンニチハ。アヒルにコンニチハ。牛にもコンニチハ。 そして、中世における宗教の中心を偲ばせる建造物さんコンニチハ。 Kirkjubømúrurinは部分的に修復中のようだ。 この辺りの家は、とりわけ、草を生やした屋根が多い。 ***** はい、コンバンワ♪ 階段上がって厨房に手をふって、2階がサル。大サル(数卓と大テーブル)・個室・半開放の仕上げキッチン&シェフズテーブル…って作りかな。全部合わせても席数はしれてる。 窓際の席に通される。 丘~海岸~海~島(Kirkjubøhólmur)を見下ろして雄大なり。 対比するように卓上花が可憐。 料理はおまかせワンコースだが、iPadで品書が来る。 主な食材内容で「アレルギーないか?」の最終確認、ワインペアリング・ジュースペアリングそれともボトルでワインならワインリストがついてます…の飲物注文。 ソムリエールのKarin Visthはなかなかの実力者で、手厚く、優しい。 「内容同じなのにラベルが4種類あるの(笑)」というシャルル・デュフールのシャンパーニュ(細い女子ラベル)で乾杯して、スタート。 ***** Mahogany Clam とんでもなく長命らしいマホガニークラムという大貝(後でググると、種類としては「500歳超え」も発見されている「最長命な動物ではないか」とのこと(^^;))。蕪の薄切りと、(そっくりの)海草・貝出汁半透明シート、ビーチハーブとその汁。 手が込んでいて、深みある旨さ。 [へべ] 蕪のベールの下には、快い食感と綺麗な旨味の貝。 モダンノルディックらしい白と緑が基調の海のスナックから、そのディナーは始まった。 [AQ!] Horsemussel コッドスキンを台にLovageのマヨネーズを点々と置き、乾燥削りのムールをたっぷり振りかける。 シャンパンのアテに丁度イイ。 不安定なコッドスキンをプルプル手にしてホワホワ削りのムールにパクつくもんだから、ムールが多少、大皿上に飛び散る。 Sea Urchins 白灰色の皿上にオレンジのムールが点々としている所に、同系白灰色の器が置かれる。ムールと同系色が雲丹、、、 狙ったな!(笑)…跳ね散らかすのを計算したとしか思えん(^^;)。 もう一色、緑はネトル(イラクサ)。 すっきりシンプルに見えて、シンプルだが、海溝を覗き込むような深淵…おそろしく美味い。 (後日ググると、フェローの雲丹は、「デンマーク本土・スウェーデン・ノルウェー・日本・フランス・英国・米国よりウマイ」という人や「北海道の方がインテンシティがある」という人など侃々諤々である(笑)。自分的には、雲丹自体はそれぞれ色々だが、雲丹料理としては記憶に無いほどの感動があった) [へべ] 雲丹にネトル。ハッとする鮮やかさは、色だけではなかった。 ネトルを背景に、わずかな塩とレモンでくっきりと縁どられた鮮烈なウニの味が、口中を風のように吹き抜けていく。 Skerpikjøt もはやお馴染みのノルディック食材の地衣類、レインディアモスの軽いカナッペの上に、生ハムに似た、色の濃い肉片が載っている。 パクリといくと押し寄せてくるのは、圧倒的な旨味と強い風味。強く、太く、長いアフター。 初めて食べる、なんとも雄々しい味だ。 これがSkerpikjøt、フェロー諸島が誇る伝統の発酵食 ræst の代表格で、羊の脚を発酵させて作ったものだという。 ræst は魚でも作る。技法としてはクラテッロなどとは割と近いらしいが、あまり強い塩は感じず、「肉そのもの」が何かに化身したような味がする。 [AQ!] 半年ほどの風乾だろうか。 ハムや熟成肉のお隣さんみたいな製法だが、味わいは全然違う。Skerpikjøtの味だ…って、「Skerpikjøt」は何回か発音してもらったんだけど、ショエー…じゃないけど、片仮名化不能な発音というか、、(^^;)。 原初感のあるような強い味ながら清澄感もあって、しがんでて何回か手を合わせてしまいますた(^^;)、ありがたや。 Leek 焼きリーク・芋・ハコベ、お手でどうぞ。ジワっと一息つく。 「手じゃ取りにくいぞ(笑)」とヘベ。 Garnatálg さてここで、パンケーキセット…の如き、があらわれる。 パンケーキ様なのはGóðarað…スカンジナビアン・クッキーで、ふつう甘味だがここではチーズ味。主役はパンケーキのクリーム…に見える連中で、まずGarnatálg。これは数ヶ月発酵の羊の内臓脂肪。それと塩鱈を合わせて(この辺の細かい段取りはよ~わからんが)ホワホワに凍結削りおろしている。伝統的には、塩鱈にGarnatálgを塗りつけて食う…みたいなスタイルがあるらしく、それを現代的にリファインした模様。 食べ口の方も、元々の粗野な組合せから離れた品良いモノ…の中に、軽みの中にコクが引き込まれている。 Rhubarbs ルバーブジュレとナスタチウム。これは次からの「本編」に向けた「お口直し」。 「アペタイザー」部は、前奏的なシンプルさを中心としてリズムを刻みながらも、手がかかったもの&旨さのパンチ力で既にクラクラです(笑)。 [へべ] 恐ろしいほどの雲丹やSkerpikjøt、ほかにもコッドスキンにロバージと削りムール貝、チーズ風味の薄焼きビスケットに削りタラの白いスプレッド…。 食前酒と楽しむ「スナック」コーナーと言いつつ印象や味の強烈な面々が続々とやってくる。 合間には、とろりとやさしいリークの芯や、爽やかなナスタチウム&ルバーブを組み込んだりして、起伏のつけ方も巧み。 これはすごいぞ、と、早くも嬉しくなってしまう。 Cod and Watercress お料理編のトップバッターは…丸いモノリス? 蕪でできた円盤の黒は焦がしリーク、中には鱈のタルタルが。 塩味のきいた鱈に、多分今が旬の、フレッシュな蕪が見事に調和している。 これに限らず全体を通して感じたのは、味のバランスがピタリと合った心地良さと、厨房の仕事の精度の高さ。 土地の産物と食文化への敬意と愛と情熱が、皿の上に美しく結晶している。 [AQ!] 本編に入ると、ググっと料理性のギアが一段上がって、ゴチソウの至福がやってくる。 組み方うまいなあ、このヒト! Crab and Caplin 蟹味のはっきりした蟹を敷く。エルダーフラワーと蕎麦アラレ。Caplin(小型カラフトシシャモ)魚卵。そこにキャラメライズドオニオンクレームをかける。 部分的には、無い組合せでは無い…けれど、未曾有の完成度でめちゃウマ。バランス主義者が悶絶する品良い味極め。 オニオンのクレームはいいモノだが、この類のソースの軽味な合わせこみはコチラの特徴。 魚卵は「ものすごい小魚でさあ、これだけで10~15尾分だぜ(笑)」…とのこと(^^;)。担当、てぇへんだ! へべは、一般論として「『モダンノルディックってどんなの?』って聞かれると説明に困るのよねぇ」と言う。 それは言える、あると思う。 …けど、自分にとっては簡単なことで、北欧に来て食ってアタマがキーンと痺れて陶酔するような体験をしたら、それがモダンノルディックやねんヽ(^~^;)ノ。 逆に、「これが、このスタイルの革新性がイノベイティブであって…、評価しないといけないんじゃないかな…と思ったり、、」とか捏ね始めてるようなんは、至ってないねん(笑)。 ま、そんなんは言うてもしゃーないけど(^^;)。 また、へべは「核心は集中力よねえ、だから長くは持たないチームも多いのかしら」…という。 うーん、たしかに、1人あたり10尾の魚卵を掻き出す作業に長距離ランナー性を持たせるのは、難題の部類ではある(笑)。 そう言えば、nomaでも「**の@@を一日中集める」みたいな作業に割り振られたスタッフは凄い勢いで逃げるそうだが(^^;)。 まあそこは、孤島の少席店はメリットもあるな♪ [へべ] これはやられた! と思ったのは蟹の料理。蕎麦米の香ばしさが蟹の繊細さを際だたせ、なんとも言えない上品な味に着地している。 [AQ!] Halibut and Wild Herbs 比較的オーソドックスな組立てで、ハリバットのポシェの表面焼きにハーブサラダ、軽いオランデーズソース。 ハリバット本体は慎重な調理で「おひょ~、名誉回復!」などと(笑)。 ハーブは、トースハウン近辺でシェフたちによる今朝摘み…とのこと。蕪・ラディッシュ。 ハーブの置き方などは、十分に現代的で綺麗だが、見た目構成に凝り過ぎてアロマが飛んでしまったりしない程度に留められている。…って感じで、とても香り高い。(案外、「現代料理」の勘所だな♪) Langoustine and Spruce …そしてこの一品が、世界のフーディーズさんたちを唸らせるスペシャリテ(笑)ラングストの松燻しである。 …にしても、美味し! 海老と香りの高次元バランス。 コレ、色んな側面で「nomaのアレソレ」に似てるけど、比較で語るのは好きじゃないけど、更にウマし…かなあ。 やはり前日のAarstovaに続き、海老はホンマ、いいんですねえ…。甘みと香気は勿論、繊維の触感がまた素晴らしい。この噛みのしなやかさに「みかわ」さんの海老天麩羅の上手く揚がった日…が思い起こされた(笑)。 ここにジュラのシャルドネ…も、実に合わせこまれている。 Lamb's Head and Potatoes 「山羊の頭のスープ」と言えばストーンズだが、「羊の頭の芋」の登場。 「目と頬と舌でごじゃります」 「え、いま何と…」 「羊の目玉です♪」 三位一体となっているが目玉も効いているのだろう。ジャガイモとパセリ。直球勝負にキリキリ舞い。 ここはペアリングも面白く、何とMikkellerの「KOKS」ビール。 Karinは「赤ワインもいいんだけどもう一つ面白くなくて…」と笑う。 ミケレルはこんな「レストランブランドビール」も作っているみたい。Torvehallerneでは「Kiin Kiin by Mikkeller」ビールを見かけた。 Fulmar and Beetroot この流れできて、主菜は何かな?とwkwkしてたら、いや、まさかの!! 鴎!!! atticaで言えばカンガルー…みたいな処理。「ワイルドで臭いです♪」…のいいとこだけを引き出し、見事に立てました。 旨いんだよ~ 香草や酸でコントロールしていく力! [へべ] かっこいいナイフが出てきて、これでどんなごつい肉を切るのかな、とワクワクしていると、メインはまさかのフルマーカモメ。 (後日)それって食べられるの? と調べてみると「臭い」と定評のある肉らしいが、ビーツとの取り合わせ、甘みはやや抑えて酸味を効かせた絶妙な味のバランスで、とても美味しく仕上がっていた。 凄腕だ~(^o^) ***** 素晴らしくおいしい食事だった。 それだけでなく、感動的な体験でもあった。 それはきっと、(この一食とは相前後した部分もあるけれど、)フェローの島々の自然や風土や人々や文化に触れることでそうなったのでは? 特別な体験。 島の人たちも、このレストランをとても誇りに思ってる、そんな風に感じて心温まる瞬間が、これっぽっちの短い滞在中に何度もあったのも驚きだった。 KOKS、いいレストランだなぁ。 [AQ!] そうなんだよねえ、島の人の、何の含むとこもなくKOKSを誇る感じ…がイイよなあ♪ Lemon Verbena and Thyme じゃすと「お口直し」にズズ…と。レモンバーベナ茶にタイムのオイル。「お抹茶で…」的にお碗。 Sorrel and Grass これがまた、ありそうでいて不思議テイスト。ホントに草っぽい(羊になった気分?)のに無性に美味い。あれ~? しかしアレです、「グラスのグラスとソレルのソルベ」って思うと駄洒落やね♪ Dulse and Blueberry ダルス紅藻を大抜擢して。やられてみるとブルーベリーと好相性。ダルスは、おきゅうと…みたいな具合。下にブルーベリー、更に緑の木苺みたいなん、と。 Góðarað …って訳で、最後はモノホンのGóðarað。 メデタシメデタシ。 ***** 原初の島に息づく、モダンノルディック最前線の活力。 圧倒的な愉悦をもたらすパワーに満ちた感性。。 あまりにもあまりにもあまりにも、魅力的でした♪ 「迷わず行けよ、行けばわかるさ…」 と言える旅は、楽しい(^^;)。
by aqishii
| 2016-08-04 14:10
| 美味しい日々
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