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AQB59 レストランをめぐるグルメのめくるめくメルクマール (早口言葉)

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2016年 12月 21日

ボクらの Cuisinier de l'année 2016 …なんちて

 …という訳で、シェフ・オブ・ジ・イヤーの発表である。…なんちて(^^;)。

 元から書けば、家庭内ではずっと例年、「今年のシェフは※※さんでしたなあ!」なんてことは言ってたのです。
「Cuisinier de l'année 20** は誰ソレ! 」…って。
 まあしかし、どうでもいいハナシで、あくまで家庭内の年中行事。

 …のだけど、何かホレ、世の中はどんどん個人的なネット社会化するし、こちらのアタマはモノを記憶できなくなってくし、「じゃあまあいっか」…って、此処に公開で書き留めることを始めた(^^;)。というのが、経緯です。
 我が家の「勝手に賞」です。

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 …そんな訳で、2013年から此処に書いとくことにした、
「今年、ボクたちが最も“勢い”を感じた料理人」

 勝手に「一人一回」と決めてるので、広めの意味での「新人賞」的…な感じです。
 ボクら長年の付き合いのシェフたちの多くは誰も知らないところで勝手に既に受賞済(笑)…なので対象外です(^^;)。

 …で、ジャ~ん!
 ボクらの Cuisinier de l'année 2016 は、


 今年はこの2人!! (敬称略)

 行くのが楽しい、食べるのが楽しい、思わずスキップらららん♪…な気分にさせられた1年だった。

 小山内さんは「ナポレオンフィッシュ」・松島さんは「黒猫夜」の時代から散々お世話になっとりますが、相次いで(2015年12月と2016年3月)独立を果たした。
 お二方とも、中国辺縁系wに明るく、メニュー上でも、
貴州・広西・壮族・苗族・湖南・楚雄・四川省自貢市・湖北・西双版納・桂林・香格里拉・雲南・西蔵・江西省・傣族・鳥魯木斉・维吾尔…
 などといった香ばしい単語がフツフツと発酵し、満都のファンを魅了している(笑)。(この辺りは「前店から引き続き」のことであるが)
 独立して、より一層の活躍ぶりである。

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 その魅力にプラスして面白いのは、この少数民族料理であるとか発酵料理とかの探求やそこからインスパイアされる料理が、現代のガストロシーン・ファインダイニングシーンの潮流と、微妙に響き合っているところだろう。
 ここのところの世界のガストロが求める傾向の一つに、一種の蛮性回帰だったり素朴さの追及だったり新しさのある懐古だったり、がある。先端シーンに「BBQ」という言葉がよく現れたり、大胆にザックリいこうぜ…みたいな表現が出たりする。(勿論、いずれの場合も「そのままの回帰」を意味してる訳ではないが)
 科学的でクールで華奢な料理がずっと先導してきたガストロは、この数年、原点回帰の荒々しさを「折り込んで」いけないか、と模索しているように見受けられる。
 そういうモダン界の身悶えと、蓮香・Matsushimaの行く道は、登山道は絶対に違うと思うけど(笑)、同じ山を攻めているような感じはする。
 ま、んー、時代とスイングしてる感がある、ってことを言いたいのかな、ワタシは(^^;)。

 しかし以上は、小山内・松島シェフの、魅力のまだ片面。
 ジャンルや方向性はそれとして、ひと皿ひと皿が自分の料理に着地し自分の世界を見せてくれる…それがハッキリとボクらを魅了するところだ。
(ここから先は「勝手にそう思ってる」ところが大きいのだが、)
 小山内シェフの料理は、荒々しく派手な見た目に対し、なんというか独特な繊細さがある。綺麗な味。いい意味、地味で滋味深いところがあり、そこに魔味が絡む。品がある。…と、各所に「ギャップ」があって、それがまたたまらんw。
 松島シェフの料理は、まずは酒とともにある。脳味噌に「酒仙」…なんて言葉が揺れているところに、酔拳のように打ち込まれて行く。そのひと皿は、図々しいまでに胸襟に飛び込んできて蹴り散らす勢いで酒杯を重ねさせる。そのようでいて、その後の余韻のキレ味の美しいこと…♪

 ところで。
 このコーナーに限らないけど、ウチんとこはいつも、「独自なこと」を言ってますなハッハッハ♪…という感が強いんだけど、今年は、年末向けのマスコミ等々でも「年間のまとめ」として、蓮香・Matsushimaの名前はよく挙がっていた。
 うーん、珍しい。ワシらもようやく時代に追いついてきたかヽ( ´▽`)丿、…じゃなくて(^^;)、この2軒は、色んな角度で今の時代に合ってるんだろうなあ…。



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2016年 4月
 *細モヤシ・ミント西双版納サラダ
 *覇王花~ドラゴンフルーツのつぼみ~自家製麻辣醤で
 *ブロッコリー広州梅菜風味
 *鉢鉢鶏 四川省自貢市名物
 *ターサイ・極上雲南金華ハム香り炒め
 *黄金幸菜 貝柱豆豉炒め
 *鯰と春芹の土鍋仕立て
 *湖北納豆オムレツ
 *湖北ベーコンと平茸・豆腐煮込
 *スペアリブ西双版納スタイル レモングラスの香り
 *豚・キャベツ・発酵唐辛子炒め
 *塩玉子和え煮込麺
 *鯰の子炒飯
 *桂花プリン

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 覇王花、冷菜仕立てをいただくのは初めてか。蘂…なのかな、ホワホワんとこがとても美味い。

 鉢鉢鶏がスペシャリテ・ポジに昇格かな♪

 ターサイ炒め、ファイアー! 火腿の香りすばらし。

 黄金幸菜は雪菜の類かなあ。見た目ほとんど黄韮、食べると根性入った黄韮…くらい。貝柱豆豉の味決めが、鼻血が出るほどイイ。
 (にんにく葉の軟白仕立て、ってことですか。黄韮に似て非…の香り・食感が楽し)

 鯰と春芹、素軽く麗しい春の鍋。ツユも飲み干す。この品に限らぬがクロカンなものをかけるのが上手。

 「納豆」とあるが発酵大豆。じつに渋い大豆玉子焼。物凄く渋くてカンドーする。人による料理、ではある。
 “中国の田舎の夕焼けの縁側で爺と孫が並んでる。ジーチャンハダイイチショキダッタンダッテ?ショキッテナーニ? ん、玉子焼に比べたらどうでもいいものだよ”…って感じの味(笑)。

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 次もまた超渋い。豆腐と平茸を包み持ち上げるベーコンの力が「巨大過ぎて見えない」的。まあ品格が高い。この辺の数品はアンテナ立ってない人には「??」かもなー。

 レモングラス風味スペアリブ…から、不思議なことに京都の古い家屋の匂いがする。山椒が仲介項になってるのは確かだけど、不思議。とてもスルスル入るスペアリブ。

 そして最後のサプライズ、最後の巨凶(違)が、鯰の卵炒飯!
 珍しさもかなりだが、この卵が、派手にはこないのだがジワリと、滋味と魔味を綯交ぜしたような雰囲気を漂わせ、まことに官能的。この期に及んで、炒飯は飲み物。



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2016年 7月
 *秋刀魚烏龍茶スモーク、冬瓜貝柱、海苔南京豆
 *貴州名産わらび春雨の冷製黒酢仕立て
 *仔羊胸腺肉と中国漬物の玉子焼き
 *鶏もも肉炭火焼き 広西チワン族仕立て
 *苗族伝統酸湯魚 ナマズの発酵トマト煮 韃靼蕎麦
 *山椒プリン チョコ添え
 *アイスの客家淵源酒がけ
 +甕熟成10年原酒100%紹興老酒 2005立冬仕込み

[AQ!]
 元「黒猫夜」の松島シェフの独立開店(3月オープン)。
 雑居ビルの玄関に不思議な看板。
 地下に降りると、無言のごついナンバーロックの扉。“ここでいいのかよ?”と押せば、静かに開く。(まあ、あの不思議な入口の「黒猫夜六本木」のシェフだったんだから…(笑))
 現れるのは、12席とかの小店。
 入ってどん突きがハーフオープンキッチンで、シェフと目が合う。この時に「オヤ?」とわかったみたい♪

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 手書きメニューをざっと眺めるだけでガッツポーズが出る(笑)。
 とくに「今月のオススメ」7品はそそるので、ここを軸に考える。
 蕨春雨が前菜的で、玉子焼~鶏焼~鯰鍋…おお、けっこーいい流れになるな、と、この線で。

 黒わらび、やや太め・ややムッチリ寄りな仕立て、ナイス前菜。

 玉子焼は、セルヴェルの料理を胸腺に置き換えたそうで、玉子焼の焼き上がりの形が面影をうつして(笑)脳味噌型。リダニョーのヌルプル感と表面のカリっとしたとこが、玉子焼でこんなに活きるとは!

 鶏の広西チワン族は、レモングラス・ミントが活躍する東南アジア隣接料理タイプで、こりゃもうどうしてくれんねん…ってくらい旨い。
 まあこういう仕立ては美味いものだが、ちゃんと時間をかけて美味しい焼鳥を作ってこの仕立てに持ってけるのが、個人小店ならでは。そう言えば隣からもれ聞こえたところ、「よだれ牛」もアラミニュイに炭火焼を作るので時間を要するらしい。

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 鯰の苗族も東南アジアニュアンスを濃厚に湛える。
 滅茶苦茶ピュアで滅茶苦茶に旨いトムヤムプラー…と言われたら、ウンウン♪…という味覚。タップリ使われた鯰の食感や香りが素晴らしい。
 で、このお鍋には「蕎麦どうですか?」と声がかかる。韃靼蕎麦。意外な取り合わせがイケる! (意外…に感じるが、中国現地でも使われるようだ)

 蕎麦〆で綺麗にまとまってしまったので、お料理はここまで。量的にはもう一品くらい、或いはこの注文の前に前菜盛合せを付けとく…くらいでもいいかもしれない。
 デザートは、山椒プリンにチョコ、が面白い。

 酒は、勿論黒猫夜扱いのものも並ぶが、今日は違うルートの、オリジナリティの濃い一本を。
 あ、そうだ、サービスのマダムともども酒好きみたいで、試飲会も店内試食も2人で…とのこと。
 こちら、料理の特徴も、ご自分でも言っていたが、強いて言えば「呑んべのツマミ」寄りな感じ。誰が食べても旨いと思うが、呑まない人よりは呑む人に薦めたい仕上がりにはなっている。

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[へべ]
 これはしたり!
 再訪必至ヽ(^。^)ノ

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by aqishii | 2016-12-21 14:59 | 年代記(日本) | Comments(0)


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