2014年 12月 02日
先週行ってたメルボルン旅行記の続き。 レストラン「アッティカ」編。 *** 2014年11月 *Cow's Milk Cheese set overnight, cold-pressed Hazelnut Oil, Artichoke Thistle Honeycomb *Baby Corn with Butter *Wallaby Blood Pikelet, maaate *Mussle, Peas, Flowers in Chicken Stock --- *Sourdough Wholemeal Bread with Caramelised Wattleseed, Macadamia Nut Purée with Cold-Pressed Macadamia Oil and Fried Saltbush Leaves, House-Churned Butter --- *Show Crab and Sour Leaves +13 Chenin Blanc Secateurs / Badenhorst Family Wines *Salted Red Kangaroo and Bunya Bunya +13 Chinon Rose / Bernard Baudry *Minted Potato, Medium Rare +Derwent Aromatic Spelt Ale Tasmanian Farmhouse Ales *142 Days on Earth +14 Bobar Syrah Yarra Valley *King George Whiting in Paperbark +10 Marsanne Moon Boulburn Terrace Vineyard *Porc, Rotten Corn and Lemon Aspen +12 Britannia Creek Yarra Valley "attica" / Patrick Sullivan --- *Garden *Pears and Maidenii +Apianae Moscato del Molise *The Industrious Beet +06 Ch.Guiraud *Pukeko Egg [AQ!] メルボルンの中心部から10kmほど南下した町リッポンリー。 電車で15分ほど。トラムも走っている。 駅からは数分、地味に古ぼけた建物の一角に地味に佇むその店が、今、世界中で話題の一軒「アッティカ」である。 さすがに予約獲得戦はタイト。詳しくはサイトを参照されたし…だが、3ヵ月先の月の予約が第一水曜の現地9amだかにオープンになる。週末の予約などはこの時刻ピッタリにクリック!…しないと即時に埋まってしまう可能性が大きい。 ウチも、時計を睨みながらPCの前でスタンバイして、予約ゲット。 「おお、アッティカ取れたぞ!」…と航空券手配開始(^^;)。 18時の開店、その時間の予約客が、既に17:55には4組ほども到着しており、ウロウロしている(笑)。 地味~な町の路傍に、それなりにお洒落した客がソワソワしているので、すぐわかる(^^;)。 *** 旅の目的は「attica」と「Brae」。 ヴィクトリア州のシェフ2トップの料理は、ホントに空恐ろしい体験だった。 なんちゅうか、この期に及んで、 「世の中にはこんなウマイもんがあるんか!?」 といったようなベタな溜息が頭の先から天に昇って行く…。 *** 「はい、こんばんなすって、と…」 「ヤア、アキ~ラ!」 …という訳で、今晩は東洋系はワシらだけの様子。 (実際、客は豪州人が多いようだ。現在“似たような境遇”のオスロ「マーエモ」が「客の半分はエトランジェ」というのと対照的) まず「水はどうする?」を聞く豪州スタイルはメルボルンも同じ。「スティル、プリーズ」。 素敵なパンにバターとともに用意されるマカデミアオイルに浮くフライドのソルトブッシュは「オーストラリアに来たぜい!」気分。 Cheese 最初のご挨拶は、自家製フレッシュチーズで、この段は料理人が出てきて蜂の巣から蜜を掬ってかけてくれる。シェフ・ベン本人が出る卓も多く、顔馴染みなど、実際この段で談笑していたり、とか。 そんなこんなでベンは客席滞在時間もある程度あるのだが、気がつくと厨房でファイアーしている(笑)。 …というのが何となく見てとれる程度に「(客・厨房)お互いちょっぴりだけオープン」なキッチン。 Baby Corn この季節らしく、ヤングコーンにバターを乗せて。 コーンの先っちょの外皮、試しに齧ったらけっこー美味かったので食ってたら「いや、それは中身だけで…」と止められた(笑)。 Wallaby Blood Pikelet 「My Recipes」と書かれた紙に乗ったパイクレット。いいツマミ。 紙を裏返すと、この料理のレシピが書かれている。ちゃんと調理法にはなってるようなのだが、「ワラビーは信頼できる業者から。アナタの車のボンネットから、とか、路傍から…というのはオススメしないよ」…という調子(笑)。 Mussle, Peas, Flowers 平たい円形の器の蓋を取ると、パッと卓上に花が咲く。 ここまでアミューズらしいオツマミが並んだが、この一品は次からのメインコースへの序章…といった感じ。 チキンストックの具合がマッスル・豆をぐんと持ち上げ、花のアクサンが入って、実にウマイ。 Show Crab and Sour Leaves 本編はまず、蟹ほぐし身を酸い葉で覆い、ネイティブ・ペッパーベリーがけ。底に敷いた抑えたマンダリン使いが巧み。あくまで軽快。 そこへの南アのシュナンブランというペアリングも良い。 Salted Red Kangaroo and Bunya Bunya 赤カンガルーのタタキというかタルタル、と、紫人参、のコンポジション。pomegranateがいいアクセント、Bunya Bunyaは味噌っぽいとでも言うようなコクも出してるかなあ。 この皿! これなんですがねえ、コレ、が、もうベラボーに旨い。たまらなく美味。 処理・調理が大変そうだけど、ワラビーやカンガルーはとてもポテンシャルが高く、旨味が詰まった食材と感じる。 ところでブニャ・ナッツは初めてで、それ自体の味の切り分けはイマイチわからない(^^;)。写真は市場で売ってるところ。新モノが出るのは秋のようだ。 Minted Potato, Medium Rare ベラボーに旨い! …としか言い様がない。それが続く。困ったものだ(^^;)。 じゃがいもの“ミディアム・レア”。ブラウンバター・ガーリック調理でミントヴィネガー、基本は酢バター味。で、そこに18ヶ月モノのタスマニアのチェダーチーズのソースをかける。 ううむむむ…と堪能してたら丁度、ベンが近くを通りかかったので「アンタ、こりゃすげーね!」と称えておいたのだが、後にガーデンで会った時に、それを覚えてたベンに、 「ゴキゲンにやってるようだねー、ポテト男!」 と突っ込まれる(笑)。 このポテトに合わせるのは、タスマニアのスペルトのエール「Derwent」。一口して「オマエはカンティヨンか!?」ってくらい、スーパー酸いい、麗しいエールで、これはもお、ピッタリ! 上手い。 142 Days on Earth 赤緑の髪の男の頭を盆に乗せてメートルが登場。…いや、赤キャベツか。 プレゼンの赤キャベツの大玉の中から、調理された物がそれぞれにサーブされる。 そしてそこにかけられるのが、エミューとビーツの真っ赤なソース。 …そう、今度はエミューである。初めて食べたわ~。小さなデに切られて、ラグー調の煮込ソース。穏やかでよく合っていると思う。 タマリンド風味燻製玉子ペースト、Wattleseed、Davidson Plum、Lemon Myrtle、Rosella。 片手に大玉の載った盆をもったまま、取り分けからソースがけまでサーブをこなしていくのを、へべは「器用なものだわ」と感心する。 気になる「142日間」という文学的標題だが、自家農園の赤キャベツが、播種から取り入れまで142日間…ということらしい。 ところでこの取り合わせが呈する「赤」は、なかなかにサイケに妖しい色彩だ。 アルザスの「ターブル・グルメ」やブルッへの「ダニーオーセール」(今はなき、だけど)あたりの怪しいレストラン、に、とても似合いそう(笑)。 Bobar Syrahはシラーズだが早摘みだとか、で、狙ってフレッシュでライトな、時にロゼかと思うようなニュアンス。 地元ヤラでこの料理に合わせた面白いチョイス。 King George Whiting in Paperbark 「King George Whiting」で、魚の名前ね。 何つうのかなー、っていま見てみたら「ダイオウギス」だそうな。 ついでのwiki知恵を書いとけば、オーストラリア南岸固有種…ということで、モロ地元の子。 美味いので養殖も試みられているが上手くいかないそう。 現れるのは、皿上に焼け焦げた樹皮を巻いたもの。奉書焼きならぬ樹皮焼き…か。なるへろ。 オイスターバター焼きになっており、アクセントはLemon Myrtle。 しっとりというかジュルジュルな仕上がりに、うまく味がのっている。 注意される通り、あまり一生懸命ナイフでゴリゴリこそぐと、樹皮繊維を一緒に食すハメになる(笑)。 このPaperbark包み焼は、アボリジニの手法らしい。 地のマルサンヌを合わす。 Porc, Rotten Corn and Lemon Aspen 豚と腐ったトウモロコシ! いいタイトルが続くぜ、アナーキー・インザ・メルボルンだぜい!(笑)。 フリーレンジのバークシャーに、ネイティブペッパーとコリアンダーシードを貼り付け焼き。 一昨年のシドニー以来、豪州豚にはメロメロである。オーストラリアは、とくに知られてるのは羊・牛・鮭であるが、実はとくに美味いのは豚・鶏・烏賊なのではアルマイト鍋…というのがウチの仮説。 どこまでいっても、フリーレンジなのが味に出るような気がする。 脂をつけた切り出しに焼きの具合も素晴らしいの一言。 腐れトウモロコシ…はマオリの手法らしく、ニュージーランド出身のベンのルーツ的な感覚でもあるとか。 ここでのマッチングワイン Britannia Creek Yarra Valley "attica" / Patrick Sullivan は、「アッティカ」用のスペシャル・キュヴェ。 ルーサンヌ・マルサンヌ・ヴィオニエ、で、1年間スキンコンタクトする?…とかの、個性派。 「は~い、豚に合わせては“オレンジ・ワイン”ですよ~♪」という口上で登場(笑)するが、たしかに液色はオレンジ。 面白い味わいだが、豚には好相性。 エチケットも可愛い(笑)。 この旅では、マッチングワインは此処がいちばん工夫があり楽しかった。ブレイのソムリエの喋りも捨てがたいが(笑)。 Garden コース本編が終了すると、「どうですか?」と裏庭に誘われる。 裏庭は、ハーブや花のガーデン。 結構な広さがあり、店で使うハーブ・花はかなりまかなえると思われる。(また、店から5分ほどの所に自家農園を持つという) ジュースを飲みながら、「この花は何々、こっちのハーブが今日の**に使ってた何々…」などの説明を受けていると、夜風が気持ち良い。 そういう季節だ、こっちは。 やがて一人に一つ、小鉢が渡される。 「はい、ココに好きなハーブを好きなだけ摘んでちょうだい。そしたらアイスとモルトビネガーを乗せてあげるから…」 と、ガーデンでの素敵な甘いものタイムが開始となる。 うほ! ここのとこ、ガーデン・畑を併設する店で、コースの一部にその場所を利用するアイディアが出てきているが、アッティカのこの段の挿入はイイ感じだ。 ベンはガーデンにも現れる。 ガーデンの照明は下方からなんで、若干、心霊写真になっちゃってゴメンね、ベン(^^;)。 Pears and Maidenii MaideniiはWattle Seed, Straberry Gum, River Mint, Sea Parsley, Wormwoodなど34種の薬草(うち12種がネイティブ)の配合による豪州ドライベルモット…らしい、が、その香りを活かしたチーズアイスと、ペア。 散らされた菊の花びらも効いている。ラヴェンダー。丸くくりぬいたペアとその干し皮。 見た目同様、愛らしくも個性を主張する一品。 The Industrious Beet これも刺激的作品名。 マンダリンソルベとソース、メレンゲ、ココナツ、チーズ、蜂蜜…、まあこれは割りとフツーではある。 Pukeko Egg 卵型キャラメル入りホワイトチョコ。まあ、愛らしいミニャルディーズ…ってとこだが、食べるとナカナカにケッコーである♪ *** いやあ、美味しいものってすげぇなあ! …とつくづく思うハッピーな一夜でありました。 attica, Ben Shewry, , , ほぼ全ての皿がすこぶるウマイ!…ってのはちょっとビックリ。アミューズ群と本編の描き分けがちゃんとクッキリしてることに代表される、構成力。 写真や文ではわかりにくい所もあるが、実際にいただいてみると「あまり他で似ているシェフが思い当たらない」。とても独自性に富む。有袋シェフ(笑)。 本編に入ると、一皿の量は、ガストロにしてはかなりガツンと大盛りでくる。客観的には。ただ、コーフンのうちにジュッとなくなる。食べ進んでも、ヒジョーに腹は軽い。むしろ、腹減る(笑)。 皿数は、とくにアミューズやデセールは、最近たまにありがちな“徒に”やたら多いのとは違い、整理されている。それでも、フツーに進行して4時間半以上は楽勝でかかるのだが、まったく長く感じない。…というか、時間の経つのが早い。え、もお?!…って感じ。楽しい。 (ブレイもそうなのだが)、サービスは一人一人が熱心でサンパ…というのに尽きる。ほんま。 「何でも聞いてくれ!」「どーだったどーだった?」「何が良かった?」… オージーらしい気楽さ…とも言えそうなのだが、キー・テツヤ・ロックプール・マークなんかはもっと気取ってた…と思う。 *** PS ま~ったく本項とは関係ないが、本日、ミシュラン東京版発表。 客としてはあんま関係ないが、フランス料理のシェフにとっては星は励みとなるだろう。 中田シェフ、生井シェフ、市塚シェフ…、おめでとうございます♪
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by aqishii
| 2014-12-02 20:13
| 美味しい日々
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