2014年 12月 16日
こないだ行ってた春のメルボルン旅行記の続き。 *** Brae 2014年11月 Spring *Salt and vinegar potato *Burnt pretzel, treacle, pork *Hapuku and crisp skin *Otway shiitake, eggplant, white miso *Iced oyster *Beef tendon and mountain pepper *Ice plant and dried sake *Asparagus, sea butter, olive plant *Turnip and brook trout roe *Prawan, nasturtium, finger lime +10 Blake Estate Blanc de Noirs Deans Marsh, Victoria +Red Hill Brewery 'Scotch Ale', Mornington Peninsula Victoria *Calamari and fermented celeriac, barbecued peas and beef fat +11 Weingut Prager ‘Hinter der Burg’ Federspiel Grüner Veltliner *Warm ricotta and nettle, roasted chicken and brassicas +12 Benedicte & Stephane Tissot 'Empriente' Chardonnay, Jura *Egg yolk, potato and jerusalem artichoke, sauce of comte and vin jaune +13 'The Story' Westgate Vineyard Blanc'MRV, Grampians Victoria *Raw wallaby, wattle and lemon myrtle, charred beetroot and radicchio +12 Domaine de Courbissac Grenache blend, Minervois *Aged Pekin duck wood roasted on the bone, quandong, dried liver +11 by Farr 'Sangreal' Pinot Noir, Geelong Victoria *Lemon, blackberry and lovage, wild cabbage and caramelised buckwheat +13 Falkenstein 'Krettnacher Euchariusberg' Riesling Auslese, Mosel *Parsnip and apple +04 Domaine des Baumard 'Cuvee de Paon', Coteaux du Layon *Rhubarb and pistachio, blood and preserved berries [へべ] ぼくらのコレクション、ミドル・オブ・ノーウェア・レストランに新たにすごい一軒が加わった。 メルボルンのサザンクロス駅から電車にゴトゴト揺られて1時間。 ジーロング駅からさらにタクシーで40分くらい走っただろうか。 牛や羊がところどころで草を食む牧草地がえんえんと続く中、「カンガルーに注意」の標識にビビったりしつつ。 やがてそんな風景の中に突然その店は現れる。 Braeブレイ、はスコットランド(ケルト)のことばで小さな丘、なんだとか。 ロイヤルメイルですでにおもしろそうなこをやっていたダンがローカルなingredientsの生産されるその場所/すぐそばで料理を供するという。 [AQ!] Royal Mail Hotelのレストランで既に圧倒的な評判を得ていたDan Hunterが、2013年末、満を持して“初のSolo Project”を立ち上げた。 それが、このBrae。 我々の「そりゃ食いに行かねば」ダイレクションが変わったわけだが、で、その今度のBirregurraってのは何処だねん?…と地図を見ると、また、クラっ…とする(^^;)。 ごく大雑把に言うと、メルボルンから160kmほど。 メルボルンから約80kmの位置にGeelongというVictoria州第2の都市があり、そこまでは1時間に1本程度の電車が走っている。 そこからの更に80kmは、旅行者の現実的手段としては、レンタカーかタクシー…しか無いようである。“東京から小田原までは電車で行けますから、後は静岡までタクってください”…感覚。 Geelong駅。発音は「自論」に聞こえる。 この日(だけ)は雨。一週間前の予報から「雨」になってた。気象がわかりやすいのか?、豪州。 駅前に、一応小さなタクシー乗り場があるっぽいのだが、天気のせいもあってか、タクシーは売切れ状態。多少ヤキモキしたが、10分ほど待つと、数台あらわれた。 インド系のドライバーは「BirregurraのBrae? はあ?」…って感じだが、ナビに入力して「ふうん」。 「遠いんかな?」 「小1時間って聞いてる」 …距離が出るのがわかって、心なしかニンマリ? Geelong市内は雷&猫犬降りでエライ騒ぎだが、Birregurraに近づくとあがり始め、時には青空も。 Birregurraまで、タクシー約120AUD。発音は何ともいえないが片仮名書きすれば「ビレグラ」…かなあ。google日本は「バーリジュッラ」とふってたけど、そう聞こえる発音のヒトには会わず。 middle of nowhere,,, 空と地面は延々と広がる。 Cape Otway Rd.に「Brae」(スコットランド語で“なだらかな小さい丘”) の看板をみつけて、曲がる。 広々とした自家農園らしきを通り過ぎると、白い建物とバックヤードの駐車場が見えてくる。 13時予約だが、余裕を見てきたのでまだ12時過ぎ。 ずっと人影なき道を辿ってきたのだが、駐車場には華やかなクルマとヒトが集い始めている。 タクシーを降りて、ちょっとだけ、お庭~畑~果樹園(…は予定、か。昨年開店時に植えたと思しき果樹多し)を散策してから、入店。 「いらっさい、アキ~ラ…ですね!?」 はいはい、何とか辿り着きましたでよ♪ また東洋系は我々だけか?…と思ったら、この昼は、中国人20人弱?のグループ(4卓ほどに分散)が入ってた。在豪っぽくて、年配者多し。バラバラと2人、4人、とクルマで到着する。 でも、ワシらにはいきなり「アキ~ラ?」と切り出してきたから、…見分けつくのかな?(笑) ダン…バーバーのとこ(Blue Hill at Stone Barns)と一緒で、まず最初に帰りのタクシーの采配を「どうしますか?」と尋ねる(笑)。お願いする。 どうも、タクシーでの来店は我々だけだったようだ。 [へべ] あっさりしているが趣味の良い造作、わりと直線的ですっきりとしたサルの雰囲気はちょっとクロムヴァーテルハンフを思わせる。 ガラスの向こうに厨房が、けっこうよく見える。 地元でとれた、今おいしい季節の素材を、自分の流儀で料理して出す。 言葉にするとあまりにシンプルであたり前で、どこが特徴なのかと問い返されそうだけれど、ダンの料理をそれ以外の言葉で飾るのは難しい。 ほとんどはトラディショナルな技法で、よく考えて練り込んだ素材の取り合わせとシンプルな構成なのに、一皿ごとに驚きや発見がある。素直においしくてわくわくする。 今ここに来なくてどうするんだ!と食べ終えた直後にもう、次はいつ来られるんだろうとうずうずしてしまう。 アミューズの段、料理の段、それぞれ量も起伏も構成もクリアによく整理されている。なんというか、(頭の中が)クリアで、落ち着いていて、でも温かみがある。 Salt and vinegar potato Burnt pretzel, treacle, pork ポテチ 黒プレツェル [AQ!] ベーコンなどを使った、おつまみプレッツェル。グリッシーニ様のうまい棒…みたい(笑)。 Hapuku and crisp skin ハプクは鱸とかアラみたいな魚。マオリ語? Otway shiitake, eggplant, white miso 秀逸過ぎるほどの味噌使い。 [へべ] アミューズに地ものの椎茸が出た。 小ぶりなしっとりした椎茸にホワイトミソ、とあるが茄子を合わせた落ちついた味のピュレと、黄色い小花の可憐な仕立て。 ポイと一口に含めば広がる山椒の香。全体のバランスがものすごくいい。 Iced oyster 牡蠣アイス。 Beef tendon and mountain pepper 牛テンドン。 [AQ!] テンドンは腱。 Ice plant and dried sake アイスプラントに日本酒の凍結乾燥粉をまぶしただけ、の工夫だが、とてもよく合ってる。 [へべ] Asparagus, sea butter, olive plant Turnip and brook trout roe かぶ魚卵。 アスパラ香草バター。 Prawan, nasturtium, finger lime エビ。 アジアンスパイス風味の、(お好みで)頭からいける温製の後、緑の葉で包んでフィンガーライムを添えたタルタルでさっぱりしめくくるという味な仕立て。 [AQ!] この海老のスパイス加減が、ずいぶん、すごく、旨かった。地味~に「自分の海老史上でトップクラスの…?」と思うくらい。 海老でアミューズが終わりで次から本編なのだが、この海老から多少、複雑な料理っぽさが増してて“本編への橋渡し”みたいな構成になってる。 アッティカもそういう組み方をしてたが、巧みだと思う。 裏の薪釜で焼いたパン・自分とこのチャーニングのバターが登場。 おそろしくウマイ。好き。自分の「レストラン史上に残るパン・バター」にノミネート必至(笑)。 Calamari and fermented celeriac, barbecued peas and beef fat セルリアック熟成3週間。 [へべ] イカ・根セロリ・青豆・牛脂。 イカに発酵根セロリ、は見るからに、もやしとえのき…とか見分けのつかない食材を合わせるところが中華的に決まっている。太めのイカソーメンとセロリアック漬(3wks.)の細切りの流れに、若いぷちぷちの青豆のバーベキュー! 上等のイカに根セロリ漬の歯ごたえと酸味、春の豆と絶妙なとり合わせ。牛脂で肉っ気も加わって味わいにまとまり感も出て、 これは大変だ! 本物だ! 大当たりだー! etc. と、早くも胸が高鳴りまくり。 Warm ricotta and nettle, roasted chicken and brassicas 次の一皿がメニューを見ても何だかわからない「ブラシカス」。 リコッタ ネトル チキン ブラシカス。 ブロッコリーなどアブラナ属(総称)だとかで、温リコッタ(ネトル入り)の土台に焼き海苔状にパリッとさせたブロッコリやらケールやらの葉が帆のように立ち並ぶ。 凝縮された葉っぱ味、というのが目からウロコ。これ(を海苔がわり)でグリーン・スシの進化版ができそう!(笑)などと大いに盛り上がる。 [AQ!] 乾燥葉っぱとかガストロバック葉っぱとか…は“ああそーそー…”くらいの出来になりがちだが、この皿は味の説得力が大きい。 Egg yolk, potato and jerusalem artichoke, sauce of comte and vin jaune ある意味、田園のキラーコンテンツ(笑)、じゃがいも玉子! [へべ] そして新じゃがに、今日も泣く。 卵黄・ポテト・菊芋。 食用ほおずきくらいの小粒なイモに春が香り立つ。 すこやかな鶏のすこやかな卵黄をとろりとからめて、ぎゅっと味の詰まったエルサレムアーティチョーク・チップスで香ばしくいただく。 旨い。 Raw wallaby, wattle and lemon myrtle, charred beetroot and radicchio 次はワラビー。 皿の上に黒っぽい葉巻がポンとひとつ。 ナイフなし。フォークもなく、ラディッキオで巻いたのを手でつまみ、ビーツのソースにつけて召し上がれ、と。 ナチュラルなタルタルに、ワイルドライスのこんがりポップ添え、焼けたラディッキオの味もぴたりとマッチ。 これは楽しい! [AQ!] ワラビー、クリスピーワイルドライス、ラディッキョ包み。 印象的であることとウマイことの両立度合に、拍手! Aged Pekin duck wood roasted on the bone, quandong, dried liver ダック熟成2週間。北京の名乗りは、皮の処理の感じかな。 サラサラ…くらいにdriedな肝の仕立ては初見かなあ。とても効果的、つけて食す。 ガルニが素晴らしく舌福で何かと思ったら、ナスタチウムの茎・葉・花をちょいと炙ったもの。加熱は珍しい?かな。 ところで、こちらのワインマッチングも色々楽しかったのだが、北京ダックに合わせるのは、地元Geelongのピノ。 我々にとっては「さっきすげー雷の鳴ってた町」でしかないジロン(^^;)だが、メルボルンのワインリストを見てるとそこそこ有力なピノの産地のよう。で、By Farrは有力生産者であるらしい。 優れた飲み心地。 [へべ] ペキンダックは2wks.熟成。 ドライな粉末仕立てにしたレバーをまぶしていただくのが乙。 *** Lemon, blackberry and lovage, wild cabbage and caramelised buckwheat レモンベリー キャベツ ソバキャラメル。 [AQ!] さて、デザートの始まり始まり。 取り合わせのオイシサに、様々な食感…クロカン含め、の具合の面白さ。 料理から引き続き、取り立てて飛び蹴りをかまさなくても、キッチリと印象を残して行く人物の大きさ。 Parsnip and apple パスニップとりんご、まんま(笑)。 面白いのは、表面に乗ってる皮はそのまんまパースニップの皮を使ってることで、食感と香りが特徴的。それに合わせて、周りに置かれてる林檎は凍結乾燥モノ。 “アラ、飾りかしら?”って皮を残してるご婦人も見ましたが、まことにモッタイナイ! ところで、流行は短い周期でも螺旋的に推移するので、何とも言い難い所はあるのだが、今回の旅ではattica, Cutler&Co.を含め、皿上に「泡」がまったく見当たらなかった。 アルギン酸なんかのケミコーもない。 で、「dried」や「fermented」「aged」の技術は随所で見る。 こーゆー諸点は、世界の同期性が上がってるなあ…とも言える。か。 Rhubarb and pistachio, blood and preserved berries ルバーブ ピスタシュ 豚血 ベリー漬。 ちょっと大きめのお茶菓子、ミニャルディーズ。といったとこだが、こんなんまで、キリっとしたお姿で美味。 血のコク出し…はけっこー使うのね。 ところで、「食後は何飲む?」には「エスプレッソ・ダブルでも」と答えてたのだが、程なくしてやってきたメートル、 「いや~ゴメンゴメン、今日、何が気に食わなかったのか、エスプレッソ・マシンがさ…」 と言って、 「ぼむ!!」 と、爆発のポーズ。たははヽ(^~^;)ノ。 でもかわりにフィルターでいれてくれた単一農園モノの珈琲、ご自慢っぽくてウマかったので結果オーライ。 あとで見たら、メルボルンの名ロースター「St.Ali」の豆だったような…。 窓の外は、雨上がりを寿いでか、鳥が飛びまわっている。 とくに大集団でいる鳥が、羽の内側と頭・腹の一部が真っ赤なので、飛び立つときなど、まことに派手。 のんびりとした食後。 この店も、出すべきモノはきっちりとした量で供してくるし、食べ応えってぇものがあるのだが、ちっともお腹は苦しくならない。 軽快で快適。 *** 旅の目的は「attica」と「Brae」。 ヴィクトリア州のシェフ2トップの料理は、ホントに空恐ろしい体験だ。 なんちゅうか、この期に及んで、 「世の中にはこんなウマイもんがあるんか!?」 といったようなベタな溜息が頭の先から天に昇って行く…。 *** 厨房と客席が近いせいか、厨房にセイ・ハローしてから退けて行く客が多い。 ボクらも厨房に顔を出すと、 「あ、ダンは先客の見送りに行ってるから、ちょっと待ってネ」 で、女性シェフにしばらく話を聞く。 シェフ、ダン・ハンターは生来のオジサン顔なのか(笑)、ひじょーに穏やかな雰囲気。話してもその通り落ち着いている、けど、「静かな自信」はタ~ップリって感じ。 その料理が、精妙でクールでありながら、何とも、明るく・温かく・豊かであるのと、よく符合している。 「メルボルンはどこ行ったの? アッティカ? 良かった? 都会だよね~♪」 …って、さ、此処と比べたら世界のガストロレストランの99.9%は「都会」やがな(笑)。 ダンは、自然への思い・職人の技量・アート性…そのバランスが、凄く良いとしか言い様がない。 実は、「ヴィクトリア州が熱そうだ、行きたい~」と思い始めてからけっこー経っていたので、ベン・シュウリについてもダン・ハンターについても詳しい経歴とかは、以前には読んでいたのだが、すっかり忘れていた。 このヒトは、2006年頃の「Mugaritz」のヘッドシェフだった人物。 こちらへ戻ってからロイヤルメールホテルでやって、それで昨年にこの「Brae」での独立を果たした。
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by aqishii
| 2014-12-16 10:33
| 美味しい日々
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Comments(4)
オーストラリアにこんなお店が!
Mugaritzに06年ごろいらしたシェフだと伺って納得です。見せ方とか、素材とか。 泡がないのは確かに驚きです。
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Anonymat
at 2014-12-16 13:08
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関係なさそうでいて、関係ありそうな話題をひとつ。
Nomaが東京に一ヶ月半オープンの話題が先行してますが、 The Fat Duckも来年メルボルンに半年オープンなんです! Nomaには日本人が数名いるし、日本語を話す(東京行きが決まる前から勉強していた)デンマーク人もいます。 とは言え、Fat Duckは同じ英語圏なので、言語についてはストレスフリーですね。 調理場も、表も、なんだかんだいっても海外に出ると、この言語ストレスが最大の関門です。ちょっとした咄嗟の指示が滞りますからね。これってレストランでは致命的なんです。
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aqishii at 2014-12-17 01:00
Hoshinoさん、ダンがMugaritzのヘッドシェフだったの、行った時にはすっかり失念してたんですが、後で、ああそうだっけ…と思うと、とてもナットクな感じでしたね~♪
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aqishii at 2014-12-17 01:03
Fat Duck、もう来てんじゃねーの?…って期待してたんですが、まだでした。アッティカ・ブレイの最前線に、一世代前ちっくなFat Duckが加わるのも一つの興味ですが、やはり来年最大の関心時は、日航・カンタスがメルボルン直行便を飛ばしそう!?な事ではないかと、、、ヽ( ´▽`)丿
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