AQB59 レストランをめぐるグルメのめくるめくメルクマール (早口言葉)

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2016年 02月 05日

地球上15000人の料理が熱い

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 何でだか、風が吹いてくることがある。
 いや、世間のことは知らないが、我が家の食には、同じような方向からの誘惑が重なることがある。
 昨年の1月は「若手モダンイノベイティブ」の、よ~いドンだった。
 今年は、年明けしたら、何故かヒマラヤおろしが吹いてきた。アンナプルナの方からの風が。
 そこにはタカリ族という人たちが住むらしい。
 その料理が熱い♪

 タカリは、wikiによれば2001年調査でネパールに13000人(!)の少数民族。「タカリバンチャ」のディネーシュさん(来日16年とか)は17000人って言ってた。(ネワール族やマガール族は100万人以上いる。シェルパ族で15万人)
 1万数千人…というのはホントに少ない。世田谷区で80万人だっけ、ワタシの住んでる町でも2万はいる。
 「料理はネワリかタカリ」は定評があるらしく、ネパールではタカリじゃない人も「タカリほにゃらら」って屋号で店を出すのがよくある…という噂も(^^;)。

 今、ネパールが熱い・タカリが熱い…と聞いて、行ってみたらホントに熱かった(^^;)。
 …という訳で、我が家の「ネパール料理店」メモ。
 極私メモなんでアヤフヤなとこだらけだし、そもそも南アジア料理・料理店関連はズブズブのマニアのおじさんたちがゴロゴロいるんで、ホントーのとこはさふいふヒトに聞いてください(^^;)。

 東京に“ネパール料理店”なんてのが出来だしたのは1980年代だと思うが、まあ象徴的に記憶にあるのは渋谷「カンティプール」だ。
 80年代後半…ってな印象だったのだが、ググると1989年開店とある。えー、けっこー遅いなあ。ワタシが初めてカトマンズ旅行したのが90年前後だった気がするんで、相前後している…。
 「カンティプール」はネパールの料理紹介の先陣を切った。たしか、ネワリ(ネワール族)がやってた。この店は現存するが、90年代半ばに経営が変わってるらしい。以前の面子は大阪で同名の「カンティプール」を開いたらしい。

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 続けて90年代にはネパール料理店がチラホラ開店するようになる。
 まあ、「モモが出るカレー屋」くらいの店も多かったけど。
 注目すべきは「クンビラ」で東京進出は1995年だったみたいだけど、この店は1978年から長野県上田市で営業していたらしい。80年代前半まではネパール料理は上田市にアリ…だったか。2008年まで日本のオスマン宮廷料理は飯田市にしか無かったことを思い出す。恐るべし長野県(笑)!
 「クンビラ」はシェルパ族なのかなあ?

 ワタシは1994年にカトマンズ出張旅行。
 ヒマ日に市場で毛派のオッサンとフレンズになってオッサンちでご飯をご馳走になった。ネワリである。美味!…ネワリの食の記憶の個人的原点。オッサンの息子は国民会議派だった。

 90年代、料理における東京のネパール人…にはもう一つの通奏低音がある。
 厳密にいつの頃からかは知らんのだけど、東京のインド料理店で料理を作ってるのは実はネパール人…というのが、目立つようになってくる。
 実際、今でもインド料理店の半数以上で、厨房はネパール人であるらしい(という記事をみかけた)。
 フロアにも、ネパール人は多い。印象としては、厨房はネワリっぽい人が多いが、フロアだとパルバテ・ヒンドゥーっぽい人もかなりいる。パルバテ・ヒンドゥーは「なに族?」と聞かれると、少し嫌そうな顔をして「ボクのカーストは…」と答える傾向があると思う。

 そんな中、東京の「本格」ネワリ料理がワンステップ進んだのが1999年の「マウントフィッシュテール」開店。まあ俺らは近所ということもあるけど(笑)、シェクワ・チョエラ・ミャオ…をグランドメニューに並べ、自家農園を持ち、ネワリの一族で営む(奥様は日本人だけど)「本格」は、まったく「新しい波」であった。
 グランドメニューは「本格」も交えながら、日本人向き・インド/タイ料理も取り混ぜて一般化もはかる一方、常連には時々のネワリのお祭り料理なども供する。

 そんな感じで時が流れていたが、ここに来て新しい風が吹き出したようだ。
 「更に」本格的に、現地的に、意欲的に、ネパールの料理を紹介しようという「第三の波」が。

 その萌芽を最初に感じたのは、2011年開店の「味家」(現「プルジャ・ダイニング」)かもしれない。
 こちらのプルジャさんはマガール族で、また少しニュアンスが違う料理でもあるが、たいへんに本格的かつ情熱的な料理を供する。チャンやトンバもね♪

 そして今年。
 「タカリ族のレストランが出来たよ」とか「大久保は今やネパールタウンらしいぜ」とか、そんな話が俺らの尻を蹴るのであった。

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2016年 1月
 *カジャセット:スクティ、バトマスサデコ、アルブテコ、サグブテコ、ムラコアチャール、ゴルベラコアチャール、チウラ
 *フィンチキン
 *ギディ ジブロ ブテコ
 *カシ ブツワ
 *ディドセット:豆・鶏・マトンカレー、ほうれん草炒め、アチャール(ムラコ・ゴルベラコ)、サラダ
 +Real Gold  +チャン

[AQ!]
 「タカリバンチャ」とは、「タカリ食堂」という意味。タカリ族の料理を供する店、…って、そんなん東京に出来るとは、えらい時代になったもんぢゃ。タカリはアンナプルナの西の山岳に住み、頭が良く、信仰心が薄く、料理上手である…そうだ。

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 大森駅から1分…と言ってもいいくらいすぐ、ビル地下。ほど良い広さ。キュートさもある内装の隅に、禍々しく(笑)どんちゃん騒ぎになった時用の楽器類などが、見える♪
 タカリの特徴的品書は別紙メニューに10種ほど。グランドメニューはネワリ中心でタカリが少し。あと、かなりの数のタイ料理が印刷されているのだが、ほぼ全てに「バッテン」が上書きされている(笑)。滑り出し時の不安と苦労が偲ばれる(笑)。

 タカリスペシャルなセット、カジャセットから。(「カナ」は食事、「カジャ」は軽食)
 軽~いチウラを真ん中に、おつまみセット調。うわ~、美味い! こらえーわ!
 バトマスサデコの「酸っぱい豆」というチャーミングさがたまらん。ムラコアチャールは優しめ。いずれも、たいへんにお味つけがよろしい。アーシーで気品がある。
 フィンチキンの春雨の具合や、ブテコの脳・舌の炒め具合、バッチリです。
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 ディドのセットは、早い話は「蕎麦掻きにカレーをつけて食う」という訳だが、これがよろしい。
 ウホホ♪ あちこちの蕎麦打ちのヒトに食べさせたくなる(笑)。やっぱ山の方のヒトは蕎麦使いなんですなー、ポピュラーな主食だそう。
 なんか、土の臭いを嗅ぎながら、新しい波に打たれるような、ゾクゾクもんの体験。

[へべ]
 ネパール料理、新しい波が(ウチに)やってきた!…って感じで、とっても楽しい。

 タカリの料理は、料理自慢の名に恥じず、ほんとにおいしい!
 バトマスサデコの、香ばしい揚げ大豆に酸っぱスパイシーな仕立て(すごくおいしい)への驚き、脳みそ舌炒めの落ち着いたスパイス使い、唐辛子をきかせたものもあれば、じんわりやさしい味もあり、なんとも上品。
 蕎麦がきをカレー汁で食べるっていうのも、新鮮だったなー。そもそもどちらも好きですが、ものすごくよく合う。食べてて、しみじみした気持ちになります。

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2016年 1月
 *Newari Samaebouzi Set: Chyura, Choela, Alu Tarkari, Kalo Vatmas, Sliced Ginger, Sadeko Sag, Boiled Egg, Achar, Bara, Pauwa
 *Vutan Mixed
 *Meat Bara
 *Mixed Sekuwa
 *Thakali Dhido Set: Salad Fapar/Kodo Dhido, Mutton Curry, Saag, Achar, Ghee, Desert
 +Baron de Paris

[AQ!]
 大久保はいつの間にやら、ネパール人街となっているらしー。ネパール料理店も増えてるようだが、その象徴のように先月オープンした本格店!…と聞くのがコチラ。
 なにせメニュー表紙に「ネパールの本物料理」と書いてあるのだ(笑)。力が入ってるのだ。
 こちらはベーシックはオーソドックスにネワリ(ネワール族)の料理だが、厨房にタカリの人もいるそうで、実際、品書中にはタカリの料理も載っている。ポリシー的にはちょうどタカリバンチャと対称か。

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[へべ]
 「タカリ族の料理」というものと出会って、勝手にネパール祭り開催中…ということで、興奮さめやらぬ勢いで新大久保のこちらへ。
 雑居ビル…の階段を上がると店の入り口扉があり、さらに階段を上がると、2フロアにわたって店がある(さらに上にもときどき人が上がってたけど、屋上か控え室かな? 謎)。

 やはりネパールは山の国、山の民、ということなのか、ネワリにしてもタカリにしても、スパイスで引き出される全体の味わいが「大地の味」っぽく、アーシー感がある。スパイシーな味といっても、暑くて湿潤でハーブがワサワサ生えてくるタイあたりとは、まったく違った魅力を感じる。なんでだか、初めて食べる味なんだけど、なんだか懐かしいというか郷愁というか、しみじみしちゃうのが不思議です。蕎麦や穀類の滋味、漬物の酸味、ゴマや豆の香ばしさが、心にしみてくる…。

[AQ!]
 まずはネワリのセット。おっといやいやいやこれは美味いぞ! (Samaebouzi Set。Samay Bajiという綴りの方がヒットするようだが)

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 軽いチウラでおかずを巡る。チョエラはこの中では鋭角的に辛いのだが、生姜とチウラに絶望的に(違)合う! たまらん。アルーはニヤニヤ笑いが出てしまう親密な味。ササゲと黒小豆の2種豆が絶妙な合の手。
 『Pauwa パウーワ ネワール民族の消化の良い食べ物』…て書いてある、「食後にどうぞ」。Pau Kwaとか綴りは色々な消化促進汁、ここのオイシイ。食後まで待てない(笑)。
 色んなとこでいただくネワリの料理の、瞬間風速が出たくらいの高レベルで揃ってる♪…みたいな印象だ。いい店だねー。
 アーシーで光と風を感じる香り、親密な身体的な味。押さえもよく効いてて品がある。
 それは炒め物=Vutanでも同じ。舌・軟骨・砂肝など。
 バラは豆粉焼かな、とてもシンプルなお焼きなんだけど実に旨い。グンドルックかなんかでちょっと味付けしてんのかなあ。
 締めのディドセット、これはタカリの料理だな。ディドがけっこー大盛で「いいだけ食べればいっか…」って言いながら、旨いんで全部食っちまったよ(^^;)。大蒜の効いたアチャールも、ダルも、ナイスなパートナー♪
 フロアの女子が気が良かった。

[へべ]
 チャン(グ)はオンメニューなれど「今はないんです…」ということで、土地柄マッコリもあるけど、赤ワインで。結果的には正解だったかも。内臓炒めとかよく合いました♪

[AQ!]
 チャン、あったり無かったりみたいだった。トン(グ)バも品切れ。…此処んちの片仮名表記は「グ」入り(笑)。

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 という訳で、東京のネパール料理が熱いのである。ますます燃えろ~♪
 タカリ族というのが地球上にたった1万数千しかいない、というのが面白かったので↑のような標題にしたけど、まあ族ごとの料理の違い…とかにこだわり・多大な関心がある訳ではない。ま、そういうのは、南アジア教条主義のマニアさんにお任せして…(^^;)。

 ただネパール料理店には盛り上がってもらいたい。…というのは、食材流通という所がある。
 「マウントフィッシュテール」の主人プロモード・スワルさんがしょっちゅう言うのだが、日本だと食材が手に入らないんで作れないネワリのご馳走料理が山ほどあるのだそう。
「山羊の肺とか、仔水牛の皮とか、みんなネワリのお祭りの重要な料理に要るんだけどなァ…」
 グルメ大国日本と言っても、肉系食材流通は脆弱だ。ネパール料理店がもっと盛り上がったら、もう少し入手できるようにならんかの~、…といった辺りがワシらの夢だ。

 日本は山羊の流通が悪い。インド料理店でも羊で代用してる所が多い。それでも正肉は昔よりよくなったが、フレッシュな内臓となると、まだまだな感がある。
 また水牛は、例の一件で、日本の畜産業界の闇の勢力に呑まれて消えたまま…な感じ。知らんけど。
 そんなことはあるのだけど、プルジャさんなんかは食材もだいぶ攻めておられるようだ。兎の内臓やミニ豚の質がいいので聞いてみたら、群馬の生産者さんとこまで買いに行ってるらしい。そりゃ、いいの取れるわ♪
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by aqishii | 2016-02-05 18:05 | 年代記(日本) | Comments(0)


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