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AQB59 レストランをめぐるグルメのめくるめくメルクマール (早口言葉)

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2018年 03月 25日

台南からボタ餅 (4)

 サバオ!
 飛び石連休で台湾南部へ。
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 *台東手採野菜
 *東北角花枝
 *烤鵪鶉 黒蒜頭醤
 *新鮮香草燻野生山豬里肌肉
 *台湾黒山羊肋排
 *五葉松吉拿棒&62%台湾功克力
 *七股香水草苺 秋海棠梗 台湾香草醤
 +13 VDF Vieille Garde
 +粟酒

[AQ!]
 昨年10月のコラボ [Anis x AKAME in Tokyo]。
 年間でも、とても美味しくとても印象的な会であった。同時に“これは(AKAMEの)現地に行って食いタイワンw”と思わされる会であった。
 なんか遠い山ん中らしい…とは言うものの、台湾自体は日本に近い。なんとか来ることが出来た。

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 小さいレストランだ。10席ちょっと。
 2015年オープン。後で気付いたのだが、googleストリートビューにはまだ2012年の写真が入っており、AKAMEの現在地は“家と家の間の駐車スペース”だったことがわかる。
 水~日曜の週5日営業で、18時~/21時~の2部制である。ボクらは第2部。
 20時50分頃に覗いたら、もう第1部のお客さんは帰っていたが、「表で21時まで待っててネ」とのこと。

[へべ]
 これは奇遇、カウンター席の相客も日本人交じりのグループ。(AQ!「我々と違い、台湾と縁の深い面々でしたw」)

 ほどよくモダンで落ち着いた、かっこいい店内。
 カウンター席にオープンキッチン、厨房の表口寄りの端が重厚な石造り2連の炉になっていて、アレックスはほぼ終始、炉の前で炎と対峙する。そうか「AKAME」と記された店の前の張り出しは炉の奥の部分だったのか(たしかに石/コンクリの肌が、ほんのり温かかった)。
 厨房、サービス合わせて4人の体制で、料理はなんとアラカルト。どれも食べたくなるところを、おすすめの口上を踏まえてエイヤと選ぶ。
 最初はビール、そのあとはワインへ。ナチュラルワインがここの料理によく合っていた。

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[AQ!]
 そうそう、店の前まで来るとまず目立つのが「AKAME」の看板文字?…だけど、アレって、炉のお尻の部分だったんだね~。
 店の中にはその日使う薪が積まれている。その横手のクロック(鉢)はソース作りなどに使われていたが、ルカイのモノのようで、翌日、民芸品店で見かけた。

「やっほーAlexさん、(昨年言った通り)何とか来られたぜい」と手を振ると、ニッコリ会釈するAlex Pengシェフ。「Andre」の出身でもある。
 女性サービスは、Alexの奥様姉妹・スーシェフは従兄弟?…だったかな。文字通りの家族経営ですにゃ。

 新興ガストロだから何となくコースかと思ってたら、アラカルト。考えてみれば、「何を焼いて食いたい?」って骨子からすれば、その方がフィットしてるか。
 口頭も含め、25品程度。
 何となく品書きは、前菜・主菜・デザート…の順で書かれ、1人に“それぞれから1品”…が基本量、とベーシック・ドゥプラ・システム。
 モノによってはもう少し食べられそうで、我々の注文は、2人で“前菜3皿・主菜2皿・デザ2皿”。
 そう言えば「AKAME」というのはルカイ語で「焼き」みたいな意味だそう。品書には、
「Aboriginal Fire AKAME Restaurant」
 と記されている。

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 ワインは「すべてナチュラルです」。リスト記載は10種ちょい、ほぼ5000円以下くらいのチョイス。

 カトラリーは使いまわしスタイル。クトゥーのゴツさが、そそる(笑)。

[へべ]
 アミューズは、黒いポテト玉。炭の黒、トッピングはカラスミと烏山椒、いいスターター。
 パンに添えたホイップバターの上にはこんがり香ばしい大麦をパラリと散らして。

台東手採野菜
 本日の野菜前菜。3種類の「野菜」(=山菜)をさっとボイルして、おろしたチーズをたっぷり、ポーチドエッグ、ピーナッツをトッピング、よく混ぜて召し上がれ。
 …少しぬめりがあったり、香りの強いもの、シャキシャキした食感のものと、それぞれに個性ある野菜の強さとちょうどバランスのとれた、いい仕立て!

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[AQ!]
 深い緑にひきこまれる。
 チーズ・ナッツで和えるという作戦はとくに奇襲ではないのだが、実に塩梅が良くて、野菜の強い魅力をひきたてる。
 野菜の名前は聞かなかったが、タイプ的に言えば、ヒユっぽいの・ミシーっぽいの・龍鬚っぽいの…のミックス、みたいな。

[へべ]
東北角花枝
 続いて鮮度抜群のヤリイカを、絶妙な火入れで。
 唐辛子のソースは、辛さというより奥深い複雑味があって魅力的。緑鮮やか、風味軽やかなわさび菜の若芽がいい仕事をしている。スパイス、小さな柑橘(シークワーサーか)を添えて。
 イカ焼きのシンプルな旨さと精妙な料理性が並び立つ、さりげなくも巧みな一皿。

[AQ!]
 「ヤリイカです」の日本語紹介で。見た目はコウイカっぽい種類かも。台湾の東北産。
 赤唐辛子ソースは適度にラッキョウ入りなのが巧み。柑橘は「沖縄の」と言ってたね。そしてパウダー状のスパイスを全体にハラリ。
 “イカにもイカ焼きw”な親しみある感触をふんわり残しながら、雑味をバッサリ切り落とす手練れの焼き。食感の、イカの細胞がサックリハラハラと噛み砕かれるような気分もたまらん。

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烤鵪鶉 黒蒜頭醤
「鶉はお手でどうぞ」
 スペシャリテ…格、なのかな、ウズラ1羽、東京コラボでも出してた。そん時の話だと、烏山椒や台湾五葉松エキスのマリネ。ソースの方は、香草オイルと黒ニンニク(イカの唐辛子ラッキョウもそうだが、黒大蒜っぽさを前面に出し過ぎないのがマル)。
 ウルっとした艶、どえらく美味なウズラ♪

[へべ]
 前菜コーナー、ちょい欲張って3品めは、やはり名菜の鶉を。
 小柄で脂ののった鶉の質が抜群、これを手づかみでワシワシと。
 ハーブのオイルソースと黒にんにくのピュレがよく合うが、それ以前に、肉に施されこんがり焼かれて一体化したマリナードの味に陶然とする。肉の焼いたのはこれが一番、と言ってしまいたくなる魔性の旨さ。

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新鮮香草燻野生山豬里肌肉
 主菜には、まず今宵のおすすめ筆頭の、猪を。
 鋳鉄鍋の蓋を開けると、青松葉の燻煙がホワッと立ちのぼる。昨日獲れたという猪肉が味といい質感といい、燻香の塩梅といい、素晴らしい。
 ガルニは山で採れた極上の茸(肉厚な木耳と、しめじに似たきのこ)に、緑の蕾は夜来香。バンコクで季節違いにて食べ損ねていた食材に、まさかのここで会えるとは♪
 美味しくて楽しくて、もう、たまりませーん。

[AQ!]
 美味しい! 今宵の大スター♪
 純粋で複雑で、軽~い!
 昨日ハンターがとってきたという猪、そのフレッシュの良さがよく出てる。香りのトーンが高く、弾むようでいて滑らかな食感、更に、旨みのトーンが高い。
 燻煙香がまた、ジメっとまとわりつくようではなく、素軽くたなびく。

 話は逸れるが、世間で「熟成肉」が流行り過ぎて、下手すると「フレッシュな旨さ」の扱いがぞんざいになっちゃいそうなのも、ナンダカナーだわなあ。
 何でもそうなのだが、最初のうちは『熟成の良さ』の話をしてたものが、人口に膾炙し過ぎるとピーポーはそれを『熟成が良い』と読み変えちゃうんだよなあ。ま、それが大衆化というものかもしれないけど(笑)。「熟成の良さ」「フレッシュの良さ」は、それぞれに、それぞれのモノ♪

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 イエライシャン(夜来香)は今のヒトは読めるのだろうか…バンコクの仇をここで討つとは…とゆーか、美味しいもんですねー!
 茸の極上具合にもびびる。

台湾黒山羊肋排
 黒山羊さんからお手紙ついた♪…お、台湾黒山羊だ、食べよ!
 品書には、里肌肉(=ロース)と肋排があるが、猪が里肌肉だったので肋排にする。
「山羊はお手でどうぞ」
 立派な骨2本と長さの揃ったw焼葱1本。山羊肉汁のソースは追いがけ用。野菜・無花果サラダ。
 しなやかでプリプリのアスリートの肉から、滾々と旨みが湧いてくるある♪ 肉を通じて感じる炎のパワーがどえらい満足感。

[へべ]
 黒山羊スペアリブは、骨ぎわの肉の魅力を満喫できる絶妙な焼き。
 ナイフははね返すのに噛みしめると思いの外の歯切れ良さ、というあたりはバンコク80/20のご近所山羊を彷彿させる。
 芋ピュレのソース、焼き葱のお供も嬉しい。

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 あかあかと燃える火で、山の恵みを焼いて食べる。ルカイ族の、言葉にすればシンプルな営みの奥の深さを、AKAMEは見事なかたちで具現化して、皿の上に載せて差し出してくれる。
 なんというか、ものすごく原初で文化で哲学な…。肉はこうして食べるのがこの上なく旨い、つくづくそんな風に感じる。自分はこういうものが、たまらなく好きなんだなぁと、あらためて実感する。

五葉松吉拿棒&62%台湾功克力
七股香水草苺 秋海棠梗 台湾香草醤
 揚げたてチュロス、外はこんがり中はふわとろ…は、それだけでも楽しいところへ、台湾カカオのチョコディップ。
 苺デザートは七股香水草苺をメインに、秋海棠のプチムース、ハーブなどの取り合わせ。
 粟の濁り酒のグラスを手に、夜は更けていく…。

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[AQ!]
 出来立てチュロス(名物らしい)の美味しいこと、“チュロスってこんな好きだっけ?”と思う間もなく、消えていく。チョコは屏東の店のものらしい。

 七股香水草苺…って凄い名前だな、日本の品種をルーツに持ち「南部天氣太陽公公太熱情」な天候に合わせたものらしい。
 シュウカイドウのスライム型ムース/香草ゼリーで囲んだ、けっこー凝った仕立ての甜品。

 デザートのお供は、ルカイ族の粟の濁り酒。(オネーサンが「アワのオサケ飲みますか?」と聞くので、みんな最初、スパークリングワインだと思った(笑))
 チャンとかマッコリとか、系統はそっち寄りで、黄色味が強く、独特の香りが良い個性。

*****

 いやあ参りました、ひと皿ごとに何だコレ!?…ってくらい、美味い。
 やっぱり「薪窯の前に1人」の精度と勢いが皿上に漲っている。
 様々なアイデア・技法も「一つの料理」に昇華している。皿上の物心一如感w。…現代のイノベイティブでは、(アイデアなどの)“足し算”が“足し算”という形のまま皿上に現れる場合が少なくないけど、やはりホントの満足感を味わえるのは「一つの料理」というものに成り果せた時だなあ。

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 親密な空間、豪快でかつ繊細な料理。こんな楽しいことはない♪

 その料理は、エッセンシャルであって、軸とか幹とか筋とか…を(文化的背景に)持っていて、シェフの個性・思考というものがあって、プリミティブなパワーがある。
 …そう考えると、「ここ最近のガストロ界の関心事」のかなり重要側面の幾つかをクリーンヒットしているのが、ここ「AKAME」ではないか…と感じられる。
 更に言えば、「その店に行くこと」「行って食べること」に伴うパフォーマンス性・イベント性…なんてのも、バッチリ持ち合わせている。(“台湾の山の中に来たらオーストロネシアな…しかもモデルか?ってくらい眉目秀麗な面々に迎えられる”…というのも、知らなかったらかなりビックリするだろう(笑))

 まあ既に台湾南部では「予約の取れない店」という評判も取っているが、これが世界ランキング系なんかで上位に上がるようになると、この僅かな席は大変な奪い合いになってしまうんジャマイカ?(^^;)
 ま、そうなる前に、再訪したいものぢゃ♪





by aqishii | 2018-03-25 21:00 | 美味しい日々 | Comments(0)


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